相続の話をする時、「遺贈(いぞう)」という言葉をよく耳にしませんか?
「遺贈って何?相続とどう違うの?」
「遺言書には『相続させる』と『遺贈する』、どっちを書けばいい?」
「孫や嫁に財産を渡すと、税金が高くなるって本当?」
実は、言葉のニュアンスは似ていても、「相続」と「遺贈」では、かかる税金や手続きの手間が大きく異なります。
知らずに遺言書を書いてしまうと、残された人が高額なコストや面倒な手続きに悩まされるかもしれません。
今回は、遺贈と相続の決定的な違いと、メリット・デメリットについて分かりやすく解説します。
そもそも「遺贈」とは?

まず、言葉の定義を整理しましょう。
相続(そうぞく)
亡くなった方の財産を、民法で定められた**「法定相続人(配偶者・子・親・兄弟姉妹など)」**が引き継ぐことです。
遺贈(いぞう)
遺言書によって、指定した相手に財産を無償で譲ることです。
相手は法定相続人でも構いませんし、**法定相続人以外(孫、息子の嫁、お世話になった友人、法人など)**でも可能です。
つまり、**「遺言書を使って、本来相続人ではない人にも財産を渡せる仕組み」**が遺贈です。
財産を渡す人を「遺贈者(遺言者)」、受け取る人を「受遺者(じゅいしゃ)」と呼びます。
「相続」と「遺贈」の決定的な5つの違い

「財産をもらえる」という結果は同じですが、コストと手間に大きな差があります。特に不動産を渡す場合は要注意です。
1. 税金が高くなる(2割加算・不動産取得税など)
これが最大の違いです。遺贈(特に法定相続人以外への遺贈)は、相続に比べて税負担が重くなる傾向があります。
| 税金の種類 | 相続(法定相続人) | 遺贈(法定相続人以外) |
|---|---|---|
| 相続税 | 通常通り | 2割加算(1.2倍) |
| 不動産取得税 | かからない | かかる(固定資産税評価額×3%等) |
| 登録免許税 | 0.4% | 2.0%(相続の5倍) |
例えば、3,000万円の不動産を受け取る場合、相続ならかからない「不動産取得税(約90万円)」や、5倍も高い「登録免許税(60万円)」がかかることになり、受遺者の負担が数百万円増えることも珍しくありません。
2. 不動産登記の手続きが面倒
「相続」であれば、相続人が単独で名義変更(登記)が可能です。
しかし「遺贈」の場合、原則として**「受遺者」と「相続人全員」が共同で申請**しなければなりません。もし相続人と受遺者の仲が悪いと、ハンコをもらえず手続きが進まないリスクがあります。
※遺言書で「遺言執行者」を指定しておけば、単独申請が可能になります。
3. 農地の取得には許可が必要
田んぼや畑などの「農地」を渡す場合、「相続」なら農業委員会の許可は不要(届出のみ)です。
しかし「遺贈(特定遺贈)」の場合、農業委員会の許可が必要です。受遺者が農業従事者でない場合、許可が下りず、登記ができない(財産を受け取れない)可能性があります。
4. 借地権・借家権の承継
「相続」なら、大家さん(地主)の承諾なしに権利を引き継げます。
しかし「遺贈」の場合、大家さんの承諾が必要となり、承諾料(名義書換料)を請求されることが一般的です。
5. 放棄の仕方が違う
「いらない」と断る場合の手続きも異なります。
- 相続: 家庭裁判所で「相続放棄」の手続きが必要(3ヶ月以内)。
- 遺贈(特定遺贈): 相続人などに「放棄します」と伝えるだけでOK(期間制限なし)。
遺贈には2種類ある(包括遺贈と特定遺贈)
遺贈には書き方によって2つの種類があり、借金を背負うリスクが変わります。
包括遺贈(ほうかついぞう)
「全財産の2分の1を与える」というように、割合を指定して渡す方法です。
- 注意点: プラスの財産だけでなく、借金(マイナスの財産)も割合に応じて引き継ぐことになります。放棄するには、相続放棄と同様に家庭裁判所での手続き(3ヶ月以内)が必要です。
特定遺贈(とくていいぞう)
「〇〇銀行の預金を与える」「自宅の土地建物を与える」というように、財産を特定して渡す方法です。
- メリット: 指定された財産だけをもらうので、原則として借金は引き継ぎません。放棄も簡単です。
遺言書の書き方:「相続させる」と「遺贈する」
遺言書を作成する際、誰に渡すかによって言葉を使い分ける必要があります。
- 相手が「法定相続人」の場合**「相続させる」**と書きましょう。手続きがスムーズで、登録免許税も安く済みます。あえて「遺贈する」と書くと、登記手続きが面倒になったり、農地の許可が必要になったりとデメリットが生じます。
- 相手が「法定相続人以外」の場合**「遺贈する」**と書きます。(「与える」「あげる」等の表現も遺贈とみなされます)
遺贈のメリット・デメリットまとめ
メリット
- 法定相続人以外(孫、息子の嫁、内縁の妻、お世話になった知人など)に財産を渡せる。
- NPO法人や自治体などに寄付(社会貢献)ができる。
- 特定遺贈なら、借金を背負わせずに済む。
デメリット
- 税金が高い(相続税2割加算、不動産取得税、登録免許税)。
- 遺留分(相続人の最低限の取り分)を侵害すると、トラブルになる可能性がある。
- 不動産の手続きが複雑になりやすい。
遺贈・相続で税金はどう変わる?まずはシミュレーションを
「孫に遺贈したいけれど、税金がいくら増えるか心配」
「不動産を渡すと、受遺者に迷惑がかかるかな?」
遺贈は、大切な人に財産を渡せる素晴らしい方法ですが、「2割加算」や「不動産取得税」のコストを計算しておかないと、逆に相手を苦しめてしまうこともあります。
遺言書を書く前に、まずは「普通に相続した場合」と「遺贈した場合」で、どれくらい税金が変わるのかを確認してみましょう。
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「法定相続人以外への遺贈(2割加算)」の影響なども考慮して、資産の配分を検討するのに役立ちます。
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