相続時に負債がある時、認知症の母に代わって子供が借金を背負うことはできるか?【実務的節税対策】

「亡くなった父の借金1億円。母は認知症で判断能力がないし、資産はあるけど管理できない。だから子供である私が借金を引き受けたい」

遺産分割において、このようなケースは非常に増えています。 子供が負債(マイナスの財産)を引き受け、その分、母がプラスの財産(現預金など)を多く相続すれば、母の「配偶者の税額軽減(1.6億円まで非課税)」をフル活用でき、一家全体の相続税を安くできるからです。

しかし、ここには**「銀行の壁」「認知症の壁」が立ちはだかります。 結論から言うと、「銀行は、認知症のお母様を借金の名義から外すこと(免責的債務引受)を、簡単には認めません」。**

では、どうすればよいのでしょうか? 今回は、認知症の親を持つ家族が直面する「借金相続」のリアルな問題と、それを乗り越えて節税を実現する**「第三者弁済」**というテクニックについて解説します。

目次

1. なぜ銀行は「子供への借金の名義変更」を認めないのか?

「母は認知症で払えないから、子が払うと言っているのに、なぜ銀行は認めないの?」 そう思われるかもしれませんが、銀行には銀行の理屈があります。

理由①:資産家(母)を逃したくないから

今回のケースでは、お母様は1.6億円もの資産を相続します。銀行から見れば、お母様は「返済能力が極めて高い優良顧客(担保)」です。 一方、お子様の資産が4,000万円程度だとすると、銀行にとっては**「資産1.6億円の連帯保証人(母)を外して、資産の少ない子供単独の債務にする」**ことは、貸し倒れリスクを高める行為になります。そのため、審査で否決される可能性が高いのです。

理由②:意思確認ができないから(契約無効のリスク)

借金の名義を変える(免責的債務引受)には、新旧の債務者と銀行の間で契約を結ぶ必要があります。 しかし、お母様が認知症で意思能力がない場合、お母様は契約書にサインができません。 無理やりサインさせても、後で「意思能力がなかった」として契約が無効になれば、銀行は大きなトラブルを抱え込みます。そのため、銀行は「成年後見人をつけてください」と一点張りになります。

2. 成年後見人をつければ解決する?実は新たなハードルも…

「じゃあ、成年後見人をつければ、子供に借金を移せるの?」 これも一筋縄ではいきません。

成年後見人は「本人の財産を守ること」が仕事です。 「母の借金を子が引き受ける(母の債務が消える)」こと自体は母の利益になりますが、その見返りとして「母のプラス財産を減らす」ような遺産分割協議を行う場合、後見人は**「ご本人の利益を損なう」として反対する**可能性があります。 また、一度後見人をつけると、亡くなるまで専門家報酬(月額2〜5万円程度)がかかり続けるというコストの問題も発生します。

3. 解決策:「第三者弁済」で実質的に借金を肩代わりする

そこで、実務上の解決策として有効なのが**「第三者弁済(だいさんしゃべんさい)」**という方法です。

第三者弁済とは?

借金の名義(債務者)はお母様のままにしておき、毎月の返済や一括返済の資金を、子供が自分の口座から銀行に支払う方法です。 民法第474条により、借金は利害関係のある第三者(子)であれば、債務者の意思にかかわらず弁済することができます。

【メリット】

  1. 銀行の手続き不要:名義変更をしないので、銀行の厳しい審査や、母の意思確認が不要です。
  2. 実質的な負担移転:お母様の資産(1.6億円)には手を付けず、お子様が支払うことで、実質的にお子様が負債を負ったのと同じ状態を作れます。

税務上の効果(ここがポイント!)

お子様がお母様の代わりに借金を返済すると、法律上、お子様はお母様に対して「私が立て替えたお金を返して」という権利(求償権)を持つことになります。

  • 一次相続時:母は1.6億円を相続(配偶者控除で税金0円)。子は借金を背負いませんが、立て替え払いを開始します。
  • 二次相続時(将来、母が亡くなった時): 母の遺産には、1.6億円の現金が残っていますが、同時に**「子供への未払い金(求償権)」という多額の負債**も残ります。 この負債を遺産総額から差し引くことで、二次相続時の相続税を大幅に安くすることができます。

結果として、「子供に負債を集中させた」のと同等の節税効果を、法的な無理をせずに実現できるのです。

4. 複雑な「求償権」と「二次相続」の計算はツールが必須

この「第三者弁済」を活用したスキームは、非常に高度な判断が必要です。

  • 子供がいくら立て替えれば、二次相続で一番得をするのか?
  • 求償権(親への貸付金)を、贈与とみなされないように管理するには?
  • そもそも、今の資産状況で成年後見人をつけるべきか?

これらを勘だけで進めるのは危険です。そこで役立つのが**『簡単相続ナビ』**です。

『簡単相続ナビ』でできること

  1. 二次相続まで含めたトータルシミュレーション 「親が借金を返済した場合」と「子が立て替え払いした場合」で、将来の税金がどう変わるかをグラフで比較できます。
  2. 資産と負債の最適配分 認知症のお母様の生活費を確保しつつ、無駄な税金を払わないための「黄金の配分比率」をAIが提案します。
  3. 税理士との連携機能 シミュレーション結果を持って、提携している「相続・認知症に強い税理士」にそのまま相談が可能。複雑な第三者弁済の記録方法などもアドバイスを受けられます。

まとめ

親が認知症の場合、銀行での借金名義変更は困難です。しかし、諦める必要はありません。 「名義は変えずに、子が払う(第三者弁済)」という知恵を使えば、銀行とも揉めず、しっかり節税対策を行うことが可能です。

まずは『簡単相続ナビ』で、あなたの家族の状況に合わせた最適なシミュレーションを行ってみてください。

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この記事を書いた人

ミラーマスター合同会社代表社員の鏡 孝正です。
私たちは、専門家任せになりがちな「相続」を、皆様がご自身の手でコントロールできるべきだと考えてます。
弊社のシステムコンサル技術を結集した『簡単相続ナビ』
で、ご家族の「安心の相続」をサポートします。
詳細は、https://mirror-master.com/about/founder-profile/をご参照下さい。

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