「孫の大学費用を出してあげたい」 「将来のために、まとまった教育費を渡しておきたい」
かわいい孫の教育のためなら、援助を惜しまないという祖父母の方は多いものです。 しかし、大金を渡すと「贈与税」がかかってしまうのが心配の種。
そこで注目されるのが、最大1,500万円まで非課税で贈与できる**「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」**です。
でも、ちょっと待ってください。 「教育費や生活費の援助は、そもそも非課税なのでは?」と思いませんでしたか?
実はその通りです。では、なぜわざわざ「特例」があるのでしょうか? 今回は、この特例の仕組みと、特例を使わなくてもいいケース(都度贈与)、そして安易に利用した際のリスクについて解説します。
そもそも教育費の援助は「元から非課税」です
まず大前提として、必要な時に必要な分だけ渡す「都度贈与」であれば、教育費に贈与税はかかりません。
国税庁も「夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの」は非課税と定めています。 (参考記事:贈与税が非課税になる財産とは?生活費や香典など4選を解説)
- 大学の入学金
- 年間の授業料
- 留学費用
これらを、その都度祖父母が直接学校に振り込んだり、孫に渡してすぐに支払ったりする場合は、金額が大きくても贈与税はかかりません。申告も不要です。
では「1500万円一括贈与の特例」は何が違う?
「都度贈与」との最大の違いは、**「将来必要になる分も、今のうちにまとめて渡せる(相続財産から減らせる)」**という点です。

制度の概要
平成25年から始まったこの制度は、祖父母など(直系尊属)が、30歳未満の子や孫に対し、教育資金に充てるための金銭等を一括で贈与した場合、受贈者1人につき最大1,500万円まで非課税になるというものです。 (※本制度は令和8年3月31日までの時限措置です)
この制度を使うメリット
- 相続対策になる(生前贈与): 都度贈与の場合、将来学費を払う前に祖父母が亡くなってしまうと、手元の現金は「相続財産」となり相続税がかかります。この特例を使えば、一気に1,500万円を孫の名義に移せるため、将来の相続税を減らす効果があります。
- 認知症リスクへの備え: 将来、祖父母が認知症になり口座が凍結されてしまうと、学費の援助ができなくなる恐れがあります。元気なうちに渡しておけば安心です。
対象となる「教育資金」の範囲と上限
1,500万円まで非課税ですが、使い道には制限があります。特に「習い事」には500万円の上限があります。
学校等(上限1,500万円)
- 入学金、授業料、入園料、保育料
- 施設設備費、修学旅行費、学校給食費
- 学用品費(教科書、制服など)
学校等以外(上限500万円)
- 学習塾、予備校の費用
- スポーツ教室(水泳、野球など)
- 文化芸術活動(ピアノ、絵画など)
- 通学定期代
※受贈者が23歳以上になると、習い事や塾の費用は対象外になります(学校等の費用はOK)。
知っておくべき3つのデメリット・注意点
「節税になるから」と安易に利用すると、かえって面倒なことになったり、税金がかかったりするケースがあります。
1. 手続きが面倒(領収書の提出)
この制度は、信託銀行などの金融機関に専用口座を開設して管理します。 お金を引き出すたびに、学校や塾の**「領収書」を金融機関に提出**しなければなりません。これが手間で「結局使わなかった」という声も多く聞かれます。
2. 30歳で使い残すと「贈与税」がかかる
孫が30歳になった時点で、口座にお金が残っていた場合、その残額に対して贈与税が課税されます。 「思ったより学費がかからなかった」という場合でも、一度渡したお金を非課税で戻すことはできません。
3. 祖父母が早く亡くなると「相続税」の対象に
ここが重要です。 契約期間中に贈与者(祖父母)が亡くなった場合、使い残している残額は、「祖父母の相続財産」として持ち戻され、相続税の課税対象になります。
※ただし、以下の場合は相続税の対象になりません。
- 孫が23歳未満である
- 孫が学校等に在学中である
つまり、「孫が小さいうち」に亡くなった場合はセーフですが、ある程度大きくなってから亡くなると、節税効果が消えてしまうリスクがあります。 (令和3年の税制改正により、孫への贈与の場合は相続税の「2割加算」の対象にもなりました)
結論:特例を使うべきか?都度贈与でいいか?
判断のポイントは**「相続財産の規模」と「祖父母の年齢・健康状態」**です。
「都度贈与」で十分なケース
- 祖父母がまだ若く元気で、認知症の心配がない。
- 相続財産が基礎控除以下(相続税がかからない)である。
- 手続きの煩わしさを避けたい。
「一括贈与の特例」を使った方がいいケース
- 相続財産が多く、将来高額な相続税がかかる見込みがある。
- 祖父母が高齢で、数年以内に認知症や相続発生のリスクがある。
- 孫がまだ小さく(23歳未満)、確実に使い切れる見込みがある。
まとめ:相続税がいくらかかるかで判断しよう
教育資金の贈与特例は、相続税対策として有効な手段の一つですが、必ずしも万能ではありません。 ご家庭の状況によっては、特例を使わずに「必要な時に手渡し(都度贈与)」する方が、手間もなく賢い選択になることも多いのです。
「うちは相続税がかかるレベルなの?」 「特例を使って1500万円減らしたら、税金はどれくらい安くなる?」
そう迷った時は、まずはご自身の資産状況で相続税をシミュレーションしてみることをおすすめします。
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