遺産分割の話し合い(協議)がまとまったら、その内容を証明するために「遺産分割協議書」を作成する必要があります。
「難しそう」「弁護士に頼まないといけないの?」と思われるかもしれませんが、書き方のポイントさえ押さえれば、ご自身で作成することも可能です。
この記事では、初めての方でも迷わず作成できるよう、書き方のポイントと、そのまま使える「ひな形(見本)」をご紹介します。
遺産分割協議書とは?なぜ作成が必要なのか
遺産分割協議書とは、相続人全員で「誰が・どの財産を・どれくらい相続するか」を話し合い、合意した内容をまとめた書面のことです。
主に以下の手続きで必要となります。
- 不動産の名義変更(相続登記):法務局への提出
- 預貯金の解約・払い戻し:銀行などの金融機関への提出
- 相続税の申告:税務署への提出
口約束だけでは、これらの公的な手続きを行うことができません。「言った・言わない」のトラブルを防ぐためにも、必ず作成しましょう。
遺産分割協議書作成の3つのポイント
作成にあたっての基本的なルールは以下の3点です。
- 誰がどの財産を取得したか明確にする 預金なら「銀行名・支店・口座番号」、不動産なら「所在・地番・家屋番号」など、第三者が見ても特定できるように正確に書きます。
- パソコン作成でOK、ただし署名は自筆推奨 本文はパソコンで作成しても構いませんが、署名欄は本人の意思確認のため「自筆」をおすすめします。
- 実印を押印し、印鑑証明書を添付する 認印では手続きができない場合がほとんどです。必ず「実印」を使用します。
ケース別:遺産分割協議書のひな形(見本)
ここでは、よくある2つのパターンのひな形をご用意しました。コピーしてご活用いただけます。
【パターン1】一般的な分割(複数人で分ける場合)
不動産は妻、預貯金は長男、その他の財産は長女といったように、財産ごとに取得者を決めるケースです。
Plaintext
遺産分割協議書
被相続人 甲野太郎(昭和〇〇年〇〇月〇〇日生まれ)
死亡日 令和〇〇年〇〇月〇〇日
本籍地 東京都渋谷区〇〇
最終の住所地 東京都渋谷区〇〇
被相続人甲野太郎の遺産相続について、共同相続人全員が遺産分割協議を行い、本日、下記のとおりに被相続人の遺産を分割取得することに合意した。
1.下記の不動産については、被相続人の妻 甲野花子が相続する
記
(土地)
所 在 東京都渋谷区〇〇
地 番 ○○番○○
地 目 宅地
地 積 ○○.○○平方メートル
(建物)
所 在 東京都渋谷区〇〇
家屋番号 〇〇番〇
種 類 居宅
構 造 木造瓦葺2階建て
床 面 積 1階部分 〇〇.〇〇㎡
2階部分 〇〇.〇〇㎡
2.下記の預貯金は長男 甲野カズオが相続する
記
〇〇銀行 〇〇支店
普通預金 口座番号〇〇〇〇〇〇
口座名義人 甲野太郎
3.被相続人のその他の財産は、長女 甲野和美が取得する
以上のとおり、相続人全員による遺産分割協議が成立したことを証明するため、本協議書を3通作成し、相続人全員が署名押印のうえ、各1通ずつ所持する。
令和〇〇年〇月〇日
住所 東京都渋谷区〇〇
相続人 (妻) 甲野花子 実印
住所 東京都大田区〇〇
相続人 (長男)甲野カズオ 実印
住所 神奈川県〇〇市〇〇
相続人 (長女)甲野和美 実印
【パターン2】特定の1人にすべての遺産を集中させる場合
「長男が家を継ぐため、全ての財産を長男が相続する」といった場合の書き方です。後々のトラブルを防ぐため、何も相続しない人も署名・押印が必要です。
Plaintext
遺産分割協議書
被相続人 甲野太郎(昭和〇〇年〇月○〇日生まれ)
死亡日 令和〇年〇〇月〇〇日
本籍地 東京都杉並区△△○丁目○番地○
最終の住所地 東京都杉並区△△○丁目○番地○
被相続人 甲野太郎(以下「被相続人」という)の遺産相続につき、相続人 甲野一郎(以下「甲」という)、相続人 甲野次郎(以下「乙」という)、相続人 甲野花子(以下「丙」という)の相続人全員が遺産分割協議を行い、本日、下記のとおり遺産分割協議が成立した。
1.甲は被相続人の有する一切の遺産(不動産、金融資産、その他一切の権利を含む)を取得する。
2.甲は被相続人のすべての債務(借入金、未払金、公租公課等を含む)を承継する。
3.本遺産分割協議書に記載のない遺産及び本遺産分割協議成立後に判明した遺産についても、甲が全て取得する。
以上のとおり、相続人全員による遺産分割協議が成立したことを証明するため、本協議書を3通作成し、甲乙丙相続人全員が署名押印のうえ、各1通ずつ所持する。
令和〇年〇月〇日
住所 東京都△△区△△○丁目○番地○
相続人甲(長男) 甲野一郎 実印
住所 神奈川県〇〇市△△町○丁目○番地○
相続人乙(次男) 甲野次郎 実印
住所 埼玉県〇〇市〇〇町○丁目○番○号
相続人丙(長女) 甲野花子 実印
失敗しないための重要チェックポイント
遺産分割協議書が無効になったり、手続きで突き返されたりしないよう、以下の点に注意してください。
1. 不動産の表示は「登記簿謄本」通りに
住所(住居表示)と地番は異なることが多いです。必ず法務局で「全部事項証明書(登記簿謄本)」を取得し、一字一句そのまま書き写してください。
2. 署名は必ず「自筆(手書き)」で
本文はパソコン作成でも問題ありませんが、署名欄までパソコンで入力してしまうと、「本人が合意していない」「勝手に作られた」と主張されるリスクがあります。署名だけは必ず本人が手書きで行いましょう。
3. 必ず「実印」で押印する
銀行手続きや不動産登記では、印鑑証明書とセットで提出します。認印やシャチハタは不可です。
4. 複数枚になるときは「契印(けいいん)」を
遺産の数が多く、用紙が2枚以上にわたる場合は、ホッチキスで留めた後、ページとページの継ぎ目にまたがるようにハンコを押します。これを「契印」と言い、ページが抜き取られたり差し替えられたりするのを防ぎます。 ※署名に使ったすべての実印で押す必要があります。
5. 部数分作成し「割印(わりいん)」を押す
協議書は相続人の人数分作成し、全員が原本を1通ずつ所持します。すべての協議書が同じ内容であることを証明するため、すべての協議書をずらして重ね、またがるように押印(割印)しましょう。
遺産分割の内容、本当にそれで大丈夫ですか?
遺産分割協議書を作成するということは、遺産の分け方が「確定」することを意味します。一度実印を押してしまうと、原則としてやり直しはできません。
- 「この分け方で、相続税はいくらになるんだろう?」
- 「不動産の評価額はこれで正しいのかな?」
- 「小規模宅地等の特例は使える?」
もし、税金の計算や分割内容に少しでも不安があるなら、ハンコを押す前にシミュレーションをしておくことが大切です。
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私たちが提供する**『簡単相続ナビ』**は、相続税がいくらかかるのかを簡単に試算できるシミュレーションツールです。
遺産分割協議書を作成する前に、まずは適正な分割案や税額をチェックしてみませんか? ご自身でシミュレーションすることで、将来のトラブルや無駄な税金の支払いを防ぐことができます。


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