相続財産の中に「池」や「沼」が含まれている場合、「そもそも評価額はつくのか?」「どうやって計算するのか?」と戸惑う方も多いでしょう。 池沼(ちしょう)は、宅地や農地とは異なり、利用価値が限定されるため、評価額は比較的低くなる傾向にあります。しかし、**「市街地にある池沼」**の場合は、宅地化の可能性を考慮して高額な評価となるリスクも潜んでいます。
本記事では、池沼の3つの区分とそれぞれの計算方法、そして相続後の活用や処分(物納)の考え方までを解説します。
1. 池沼(ちしょう)の相続税評価における3つの区分
相続税評価において、池沼は以下の3つに区分されます。ご自身の土地がどれに該当するかを確認しましょう。
| 区分 | 特徴 | 評価方式 |
|---|---|---|
| 純池沼 | 市街地から離れた場所にあり、宅地への転用が見込めない池や沼。 | 倍率方式 |
| 中間池沼 | 市街地近郊やリゾート地などにあり、売買実例価額が純池沼より高い水準にあるもの。 | 倍率方式 |
| 市街地池沼 | 市街化区域内などにあり、宅地への転用が見込める池沼。 | 宅地比準方式 または 倍率方式 |
※区分は、国税庁の「評価倍率表」で確認できます。倍率表の「池沼」欄に「純」とあれば純池沼、「中」なら中間池沼、「比」または「市比」なら市街地池沼となります。
2. 【純池沼・中間池沼】倍率方式による計算
純池沼と中間池沼は、固定資産税評価額をベースに計算します。
計算式:
相続税評価額=固定資産税評価額×倍率
- 固定資産税評価額:毎年届く納税通知書の課税明細書で確認できます。
- 倍率:国税庁の「評価倍率表」に記載されています。
注意点: もし倍率表に「純原野比準」や「中原野比準」と書かれている場合は、近隣の原野の価額を基準に計算する必要があります。この計算は複雑なため、専門家のサポートを受けることを推奨します。
3. 【市街地池沼】宅地比準方式による計算(高額リスク)
市街地にある池沼は、「もし埋め立てて宅地にしたらいくらになるか」という考え方で評価します。
計算式:
評価額=(宅地としての評価額−1㎡当たりの宅地造成費)×地積
- 宅地としての評価額:路線価などを基に、その土地が更地の宅地だった場合の価額を算出します。
- 宅地造成費の控除: 池を埋め立てて宅地にするには、多額の工事費がかかります。
- 埋立費(土を盛る費用)
- 土止費(擁壁を作る費用)
- 地盤改良費 これらの費用を評価額から差し引くことができます。特に池沼は埋め立てに多額の費用(造成費)がかかるため、結果的に評価額がゼロやマイナスになるケースも珍しくありません。その場合、評価額はゼロとして申告します。
4. 池沼の相続における注意点と出口戦略
収益性の低さと維持管理
池沼は、景観が良い場合を除き、賃貸や売却が難しい「負動産」になりがちです。固定資産税は安くても、管理責任(ゴミの不法投棄対策や安全管理)が重くのしかかることがあります。
物納の検討
どうしても活用が難しく、相続税の支払いに充てる現金も不足している場合、「物納(ぶつのう)」を検討するのも一つの手段です。ただし、境界が確定していない、管理が困難などの理由で却下される可能性もあるため、事前の調査が必要です。
地目変更は慎重に
池沼を埋め立てて駐車場などにする場合、地目を「雑種地」や「宅地」に変更する登記が必要です。これには土地家屋調査士への依頼が必要となりますが、安易に地目を変えると固定資産税が跳ね上がる可能性があるため、活用計画とセットで検討しましょう。
まとめ:池沼の評価は「造成費」が鍵
池沼の評価、特に市街地池沼の評価は、「宅地造成費」をどれだけ正確に見積もれるかで税額が大きく変わります。埋め立て費用が高額になれば、相続税評価額を大幅に下げられる可能性があります。
**『簡単相続ナビ』**では、住所を入力するだけで、その土地の路線価や倍率を自動で取得し、概算の評価額をシミュレーションできます。造成費の計算が不安な方も、まずはシミュレーションで「評価額がつくのか、ゼロに近いのか」を確認してみることをお勧めします。


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