「会社にお金はあるが、個人の手取りにすると税金が高い」
「万が一の時、家族に現金を残したいが相続税が心配だ」
オーナー経営者にとって、会社は最大の「節税装置」になり得ます。
特に「死亡退職金」と「法人契約の生命保険」を組み合わせたスキームは、現金を効率よく遺族に移転できるだけでなく、自社株の評価を下げて事業承継を有利にするという、経営者だけの「一石二鳥」の効果があります。
この記事では、退職金・保険・弔慰金をフル活用した高度な相続対策と、税務署に否認されない「適正額」の算出方法について解説します。
なぜ「死亡退職金」が最強の相続対策なのか?
経営者が亡くなった際に会社から支払われる「死亡退職金」には、一般の相続財産(預金や不動産)にはない強力な「非課税枠」が設けられています。
1. 相続税の非課税枠(500万円の特例)
死亡退職金は「みなし相続財産」として相続税の対象になりますが、以下の金額までは税金がかかりません。
非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の数
例えば、妻と子供2人の計3人が相続人の場合、1,500万円までの退職金は無税で受け取ることができます。
個人の預金として残しておくよりも、会社から退職金として受け取った方が、手取り額が圧倒的に多くなります。
2. 「弔慰金(ちょういきん)」はさらに非課税
退職金とは別に、会社から遺族へ「弔慰金(お見舞金)」を支払うことも可能です。
これも一定額までは相続税の対象外(非課税)となります。
| 死亡の原因 | 非課税となる限度額 |
|---|---|
| 業務上の死亡 | 賞与を除く給与の3年分(36ヶ月分) |
| 業務外の死亡 | 賞与を除く給与の半年分(6ヶ月分) |
例えば、月収100万円の社長が病気(業務外)で亡くなった場合、600万円までの弔慰金は相続税がかかりません。
退職金と合わせれば、数千万円規模の現金を無税で家族に残すことも可能です。
会社側のメリット:株価引き下げ効果
死亡退職金の支払いは、遺族(個人)だけでなく、会社(法人)にも大きなメリットをもたらします。
それは「自社株評価(相続税評価額)の引き下げ」です。
退職金支給で「利益」と「純資産」を減らす
高額な退職金を支払うと、会社の会計上は大きな「損失(費用)」が発生し、同時に手元の「現預金(資産)」が減少します。
これにより、自社株の評価計算において以下の効果が発生します。
- 類似業種比準方式:「利益」が減ることで株価が下がる。
- 純資産価額方式:「純資産」が減ることで株価が下がる。
つまり、「現金を渡して(退職金)、後継者が引き継ぐ株の税金を下げる」ことができます。
これこそが、事業承継を控えた経営者ならではの高度なテクニックです。
生命保険の活用:原資確保とリスクヘッジ
しかし、退職金を払うためには多額の現金が必要です。
社長が突然亡くなった時に、会社の運転資金を切り崩して退職金を払うと、資金繰りが悪化し、最悪の場合は黒字倒産のリスクさえあります。
そこで活用されるのが「法人契約の生命保険」です。
保険活用のポイント
- 死亡保険金を退職金に充てる:
社長に万が一のことがあった際、会社に入ってくる死亡保険金をそのまま退職金や弔慰金の支払いに充てます。会社のキャッシュを傷めずに済みます。 - 解約返戻金を勇退退職金に:
生存して引退(勇退)する場合は、保険を解約し、その返戻金を退職金原資にします。
保険料の一部を損金(経費)にできる商品を選べば、毎年の法人税対策にもなり、一石三鳥の効果が期待できます。
注意!「いくらでも払える」わけではない
節税効果が高いからといって、無制限に退職金を払えるわけではありません。
「過大な役員退職金」として税務署に否認されると、損金として認められず(法人税増)、受け取る側も「賞与扱い」となり(所得税増)、大損するリスクがあります。
一般的には「功績倍率法」という計算式を用いて、適正額を算出します。
適正額 = 最終報酬月額 × 役員在任年数 × 功績倍率
(※社長の場合、功績倍率は3.0倍程度が目安とされています)
「適正額は?株価への影響は?」はシミュレーションで確認
「自分の報酬と年数なら、いくらまで退職金が出せる?」
「それを払ったら、自社株の評価額は具体的にいくら下がる?」
退職金と株価、そして相続税は連動しているため、頭の中で計算するのは困難です。
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まとめ:会社と家族を守る準備を
経営者の相続は、個人の問題と会社の問題が密接に絡み合っています。
退職金と保険をうまく活用することで、家族に現金を残しつつ、会社(後継者)の税負担を減らすことが可能です。
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