【完全版】農地の相続税評価額の求め方|4つの区分と計算式、生産緑地の特例まで徹底解説

親から田んぼや畑などの「農地」を相続した際、多くの人が直面するのが**「この土地にはいくらの相続税がかかるのか?」**という疑問です。

農地の評価は、一般的な宅地とは異なり、「その農地がどこにあるか」「どのように利用されているか」によって評価額が数倍から数十倍も変わるという特徴があります。誤った区分で計算してしまうと、本来払う必要のない多額の税金を納めることになったり、逆に過少申告で追徴課税を受けたりするリスクがあります。

この記事では、難解な農地の相続税評価について、国税庁の指針に基づき、4つの区分判定から具体的な計算方法、さらには「生産緑地」の特殊な評価減までを、専門知識がない方にも分かりやすく解説します。

また、複雑な計算を自動化できるツール『簡単相続ナビ』の活用法も併せてご紹介します。

目次

1. 農地評価の第一歩は「4つの区分」を知ることから

相続税における農地の評価額を決める最大の要因は、その農地の**「区分」**です。国税庁は農地を以下の4つに分類しており、それぞれ評価方法が全く異なります。   

農地区分概要評価方法難易度
① 純農地農業利用がメインの地域にある農地倍率方式
② 中間農地市街地と純農地の中間に位置する農地倍率方式
③ 市街地周辺農地市街地農地に転用可能な農地市街地農地 × 80%
④ 市街地農地宅地への転用が見込まれる農地宅地比準方式 または 倍率方式

なぜ区分けが必要なのか?

農地法や都市計画法により、宅地に転用できる土地と、農地として守るべき土地が明確に分けられているためです。宅地に転用できる「市街地農地」は宅地並みの高い価値がつきますが、転用が制限されている「純農地」は低い評価となります。


2. 各区分の詳細と計算方法

表1:農地区分と適用される評価方式の対応表

農地区分適用評価方式備考
純農地倍率方式固定資産税評価額 × 倍率
中間農地倍率方式固定資産税評価額 × 倍率
市街地周辺農地市街地農地 × 80%市街地農地として評価した額の80%相当
市街地農地宅地比準方式 or 倍率方式(宅地価額 – 造成費) または (固定資産税評価額 × 倍率)

① 純農地・② 中間農地:シンプルな「倍率方式」

最も計算が簡単なパターンです。これらの農地は、宅地への転用が難しいため、固定資産税評価額をベースに評価します。

計算式

評価額 = 固定資産税評価額 × 倍率

  • 固定資産税評価額: 毎年春に役所から届く「固定資産税課税明細書」に記載されています。
  • 倍率: 国税庁のHP「路線価図・評価倍率表」で、地域ごとに定められた倍率を確認します。   

【ここがポイント】 純農地と中間農地の評価額は比較的低くなる傾向にあります。しかし、倍率は地域によって大きく異なる(例:数十倍〜百倍以上など)ため、必ず最新の倍率表を確認する必要があります。


3. ③ 市街地周辺農地:市街地農地の80%評価

この区分は、将来的に宅地化が見込まれるものの、現時点では農地として利用されている土地です。「市街地農地(宅地並み)」としての価値から、造成にかかる時間や手間を考慮して**80%**の評価とします。   

計算式

評価額 = 市街地農地としての評価額 × 80%

この計算を行うためには、まず次項で解説する「市街地農地」としての評価額を算出する必要があります。


4. ④ 市街地農地:最も複雑な「宅地比準方式」

都市部の農地は、実質的に「宅地」と同等の価値があるとみなされます。そのため、評価方法は「もしそこが宅地だったら?」という仮定に基づいて計算する**「宅地比準方式」**が採用されます(一部地域では倍率方式)。

計算式(宅地比準方式)

評価額 = (その農地が宅地であるとした場合の価額 − 1㎡あたりの宅地造成費) × 地積

この計算が非常に難しい理由は2点あります。

  1. 「宅地であるとした場合の価額」の算出: 路線価に、土地の形状(不整形地)、奥行き、間口などを考慮した「補正率」を掛けて算出します。土地の形がいびつだったり、道路に面していない場合は評価額を減額できる可能性があります。   
  2. 「宅地造成費」の控除: 農地を宅地にするには、整地、土盛り、土止めなどの工事が必要です。国税庁が定める「宅地造成費の金額表」に基づき、その工事費用相当額を評価額からマイナス(控除)します。

注意点: 宅地比準方式は専門的な知識が必要です。計算ミスが最も起きやすい区分であり、税理士でも評価が分かれることがあります。


5. 「生産緑地」の評価:都市農家への特例措置

都市部にある農地でも、「生産緑地」に指定されている場合は、特別な評価減(減額)が受けられます。これは、生産緑地に指定されると「30年間は農地として維持しなければならない(建築などができない)」という強い制限がかかるため、その分価値を割り引くという考え方です。   

評価額の計算式

評価額 = 市街地農地としての評価額 × (1 − 控除割合)

控除割合の決まり方

課税時期(相続開始日)において、市町村長に対して「買取りの申出」ができるようになるまでの期間に応じて、以下の割合を控除します。   

買取り申出までの期間控除割合
5年以下10%
5年超 〜 10年以下15%
10年超 〜 15年以下20%
15年超 〜 20年以下25%
20年超 〜 25年以下30%
25年超 〜 30年以下35%
買取り申出中 または 申出可能5%

【重要】生産緑地のリスク もし、課税時期において「買取りの申出をしてから3ヶ月を経過」していても買い取られなかった場合、その土地は行為制限が解除され、通常の土地と同じように使用収益が可能となります。この場合、生産緑地としての評価減(斟酌)は適用されず、通常の市街地農地として高く評価されることになります。   

6. よくある質問(FAQ)

農地の評価方法はどのように決まりますか?

農地の区分(純農地、市街地農地など)によって異なり、主に「倍率方式」と「宅地比準方式」のいずれかで計算されます。

生産緑地の相続税評価はどうなりますか?

買取り申出ができない期間に応じて、通常の評価額から一定割合(10%〜35%)が控除されます。


7. 自力での計算は危険?農地評価の落とし穴

ここまで解説した通り、農地の評価は「区分の判定」から始まり、「路線価の補正」「造成費の計算」「生産緑地の期間確認」など、非常に多くの専門知識を要します。

  • 過大評価のリスク: 不整形地の補正や造成費控除を忘れて計算し、本来より高い相続税を払ってしまう。
  • 過小評価のリスク: 市街地周辺農地を純農地と勘違いして申告し、税務調査で追徴課税を受ける。

特に、土地の評価額は相続財産全体の中でも大きな割合を占めるため、少しの計算誤差が税額に数百万円単位の影響を与えることも珍しくありません。   

そこで役立つのが『簡単相続ナビ』

「専門家に頼む前に、まずは概算を知りたい」「将来の相続に備えてシミュレーションしておきたい」。そんな方のために開発されたのが、ミラーマスター合同会社の**『簡単相続ナビ』**です。   

『簡単相続ナビ』の強み

  1. 正確な資産評価: 難しい土地の評価も、住所や条件を入力するだけで、国税庁のデータに基づいたシミュレーションが可能。
  2. 3つのプラン:
    • 相続発生版: すでに相続が起きた方向けの申告・分割サポート。
    • 終活対策版: 生前贈与や不動産評価など、将来の節税対策に。   
    • 人生総括版: 事業承継や資産凍結対策まで含めた生涯の資産管理。
  3. 専門家監修: 最新の税制改正や調整率表に対応しており、安心して利用できます。   

8. まとめ

農地の相続税評価は、以下のステップで行います。

  1. 農地区分の確認: 純農地、中間農地、市街地周辺農地、市街地農地のどれか?
  2. 計算方式の適用: 倍率方式か、宅地比準方式か?
  3. 特例の確認: 生産緑地の指定を受けているか?

これらを一つひとつ手作業で確認するのは大変な労力です。まずは**『簡単相続ナビ』のシミュレーション**を使って、あなたの農地の概算評価額を把握してみましょう。適正な評価を知ることが、円満な相続と節税への第一歩です。


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この記事を書いた人

ミラーマスター合同会社代表社員の鏡 孝正です。
私たちは、専門家任せになりがちな「相続」を、皆様がご自身の手でコントロールできるべきだと考えてます。
弊社のシステムコンサル技術を結集した『簡単相続ナビ』
で、ご家族の「安心の相続」をサポートします。
詳細は、https://mirror-master.com/about/founder-profile/をご参照下さい。

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