「時価」だけではない?有価証券の評価は「選べる」
現金(預貯金)は「残高=評価額」ですが、株や投資信託などの「有価証券」は、日々価格が変動するため、いつの時点の価格を採用するかで相続税が大きく変わります。
実は、上場株式などの評価には、納税者が損をしないように**「いくつかの価格の中から、一番低い(有利な)ものを選んで良い」**というルールがあります。
この記事では、上場株式、投資信託、債券の評価ルールと、損をしないための調査方法について解説します。
1. 【上場株式】評価額は「4つの価格」から最安値を選ぶ
上場株式(証券取引所で売買されている株)の評価は、単に「亡くなった日の株価」だけで決まるわけではありません。
以下の4つの価格を比較し、最も低い価額をその株式の評価額とすることができます。
選べる4つの評価基準

- 課税時期(亡くなった日)の終値
- 課税時期の月の、毎日の終値の平均額
- 課税時期の前月の、毎日の終値の平均額
- 課税時期の前々月の、毎日の終値の平均額
【具体例】4月20日に亡くなった場合
- 4月20日の終値:5,000円
- 4月の月平均:4,700円
- 3月の月平均:5,100円
- 2月の月平均:4,900円
通常なら当日の5,000円で計算するところですが、この場合は**「4月の月平均 4,700円」**を採用できます。
もし1,000株持っていれば、30万円(500万円 – 470万円)も評価額を下げることができ、節税につながります。
土日祝日に亡くなった場合
亡くなった日が土日祝日で市場が休みだった場合は、「最も近い営業日の終値」を使います(両隣の平日が同じ距離なら、その平均値)。
2. 【投資信託】評価額は「手取り額」で計算する
投資信託(ファンド)の評価は少し複雑です。
基本的には**「もし亡くなった日に解約したとしたら、手元にいくら戻ってくるか」**という金額で評価します。
一般的な投資信託の計算式
評価額 = (1口当たりの基準価額 × 口数) - (A + B)
- A:解約時にかかる税金(所得税・住民税など)
- B:解約手数料(信託財産留保額など)
単に「基準価額 × 口数」にするのではなく、そこから解約にかかるコスト(税金や手数料)を引くことができるのがポイントです。これを忘れると評価額が高くなり、税金を払いすぎてしまいます。
3. 【債券】国債や社債の評価方法
国債や社債などの公社債は、種類によって評価方法が異なります。
- 利付公社債(利子がもらえるタイプ):(発行価格 + 既経過利息) で評価します。市場価格がある場合は、株式と同様に最終価格を使います。
- 割引債(利子がないタイプ):(発行価格 + 償還までの期間に応じた増加分) で評価します。
いずれの場合も、**「既経過利息(亡くなった日までに発生しているが、まだ受け取っていない利子)」**を忘れずに計算に入れましょう。
4. 正確な評価のための「調査方法」
有価証券の評価を正確に行うためには、証券会社から正しい情報を集める必要があります。
手順①:「残高証明書」を請求する
被相続人が口座を持っていた証券会社や銀行に連絡し、**「相続開始日(死亡日)時点の残高証明書」を発行してもらいます。
この際、必ず「既経過利息」や「過去3ヶ月分の月平均株価」**も記載してもらうよう依頼しましょう(多くの証券会社で対応してくれます)。
手順②:「配当金」の確認
株式の配当金は、株価とは別に評価する必要があります。
- 配当期待権: 配当が決まっているがまだ受け取っていないもの
- 未収配当金: 支払日が過ぎているがまだ受け取っていないものこれらも通帳の履歴や郵便物(配当金計算書)から確認し、漏れなく計上します。
手順③:口座がわからない場合
「株をやっていたようだが、どこの証券会社かわからない」という場合は、**証券保管振替機構(ほふり)**に開示請求を行うことで、故人が口座を持っていた証券会社を一括で調査できます。
5. 面倒な株価比較は『簡単相続ナビ』におまかせ
「複数の銘柄について、過去3ヶ月分の平均株価を全部調べるのは大変…」
「投資信託の税金計算なんて難しくてできない…」
有価証券の評価は、不動産に次いで計算ミスが起きやすい項目です。
そこで活用したいのが、ミラーマスター合同会社が運営する**『簡単相続ナビ』**です。
『簡単相続ナビ』のメリット
- 株価の自動比較には対応していませんが…各月の平均株価や終値を入力することで、自動的に一番低い価格を選択して評価額を算出するロジックに対応しています。自分で電卓を叩いて比較する必要はありません。
- 投資信託の複雑な計算に対応:基準価額や口数を入力し、信託財産留保額などの条件を設定すれば、正しい評価額(控除後の金額)を自動計算します。
- 財産目録への反映:計算した結果はそのまま財産目録として出力できるため、申告書の作成や遺産分割協議にそのまま使えます。
「少しでも評価額を下げて節税したい」とお考えの方は、まずは無料シミュレーションで正確な評価額を試算してみましょう。
まとめ
- 上場株式: 「死亡日」「当月平均」「前月平均」「前々月平均」の4つから、最も低い株価を選んで評価する。
- 投資信託: 解約したと仮定して、**手数料や税金を引いた「手取り額」**で評価する。
- 調査: 証券会社から「残高証明書(既経過利息・過去の平均株価付き)」を取り寄せる。
- ツール: 複雑な比較や計算は『簡単相続ナビ』を使えば、ミスなく有利な評価額を算出できる。
有価証券は「評価の仕方」で税額が変わる資産です。正しい知識とツールを使って、賢く相続税を抑えましょう。


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