法定相続人でも相続できない5つのケース|放棄と欠格の違い

「自分は長男だから、間違いなく遺産を相続できるはず」 「借金があるから、遺産はいらないと兄弟に伝えれば大丈夫」

そう思っていませんか? 実は、民法で定められた「法定相続人」であっても、特定の手続きや事情によって相続権を失う(または自ら手放す)ケースがあります。

特に注意が必要なのが、「相続放棄」と「相続分の放棄」の混同です。この違いを知らずに安易にハンコを押してしまうと、**「遺産は1円ももらえないのに、親の借金だけ背負わされる」**という最悪の事態になりかねません。

本記事では、法定相続人が遺産を相続できない5つのパターンと、それぞれの決定的な違いについて解説します。


目次

1. 【一覧表】相続できない5つのパターンと違い

まずは全体像を整理しましょう。相続できないケースは大きく分けて、**「自ら手放す場合」「権利を剥奪される場合」**の2種類があります。

区分種類概要借金の支払い代襲相続
(孫への権利移行)
自ら手放す①相続放棄裁判所で手続きし、最初から相続人でなくなるなしなし
②相続分の放棄遺産分割協議で「いらない」と意思表示するあり(残る)なし
(自身の意思のみ)
③限定承認プラスの財産の範囲内でのみ借金を払うなし(範囲内)
剥奪される④相続欠格犯罪や不正行為により権利を失うなしあり
⑤相続廃除虐待などで被相続人から権利を奪われるなしあり

2. 【要注意】「相続放棄」と「相続分の放棄」は全く別物!

ここが最も誤解を生みやすく、危険なポイントです。

① 相続放棄(借金も消える)

  • 手続き: 家庭裁判所に申述が必要。
  • 期限: 相続開始を知った日から3ヶ月以内
  • 効果: 「初めから相続人ではなかった」とみなされます。遺留分も認められなくなります。
  • メリット: 親の借金や保証債務を一切引き継がなくて済みます。
  • 注意点: 次の順位の人(親や兄弟姉妹)に相続権(と借金)が移ってしまいます。

② 相続分の放棄(借金は残る!)

  • 手続き: 遺産分割協議書に「遺産は取得しない」として実印を押すだけ。
  • 効果: プラスの遺産をもらう権利を放棄します。
  • リスク: 借金を支払う義務(法定相続分)は消えません。 債権者(銀行など)から見れば、遺産分けの話し合いは内部の事情に過ぎないため、「あなたは法定相続人なのだから、借金を返してください」と請求されれば拒否できません。

結論: 借金から逃れたいなら、必ず家庭裁判所で「①相続放棄」をしてください。


3. 財産を守りつつリスクを避ける「限定承認」

③ 限定承認

「借金があるかもしれないが、実家だけはどうしても残したい」 そんな時に使えるのが限定承認です。

  • 概要: プラスの財産(預金や不動産)の範囲内でだけ、マイナスの財産(借金)を引き継ぐ方法です。もし借金の方が多くても、自分の財産を持ち出してまで返す必要はありません。
  • ハードル: 相続人全員が一致して、3ヶ月以内に裁判所に申し立てる必要があります。手続きが非常に複雑なため、専門家のサポートがほぼ必須です。

4. 権利を強制的に失う「欠格」と「廃除」

こちらは、相続人の「悪質な行い」に対するペナルティです。

④ 相続欠格(問答無用で失格)

以下のような行為をした場合、何の手続きも必要なく、法律上当然に相続権を失います。

  • 故意に被相続人や、自分より上位の相続人を殺害して刑に処せられた。
  • 遺言書を偽造・変造したり、破棄・隠匿(隠すこと)した。
  • 詐欺や脅迫によって、遺言書を書かせたり撤回させたりした。

ポイント: 欠格者本人は権利を失いますが、その子供(被相続人の孫)には代襲相続が認められます。「親の罪は子に関係ない」という考え方です。

⑤ 相続廃除(被相続人の意思で排除)

被相続人(亡くなる人)に対して、虐待や重大な侮辱行為があった場合、被相続人の意思によって相続権を奪うことができます。

  • 手続き: 被相続人が生前に家庭裁判所に申し立てるか、遺言書で指定します。
  • 対象: 遺留分を持つ相続人(配偶者、子、親など)。※兄弟姉妹は遺留分がないので、廃除しなくても遺言書で「渡さない」とすれば足ります。
  • ポイント: こちらも、廃除された人の子供には代襲相続が認められます。

まとめ:正しい知識で「争族」と「借金」を回避しよう

「相続できない人」には、自ら選ぶ場合と、強制的に選ばれる場合があります。

特に重要なのは、**「借金があるなら、遺産分割協議ではなく、必ず家庭裁判所で相続放棄をする」**ということです。ここを間違えると、遺産はもらえないのに借金の督促状だけが届くという悲劇を招きます。

また、自分が相続放棄をすると、借金の請求が突然、疎遠だった親戚(次順位の相続人)に行ってしまい、トラブルになることもあります。

**『簡単相続ナビ』**を使えば、

  • 「自分が相続放棄したら、次は誰が相続人になるのか?」
  • 「法定相続人は誰で、それぞれどれくらいの権利があるのか?」

といった複雑な権利関係を、相関図でひと目で確認できます。 親族間のトラブルを未然に防ぐために、まずはご自身の状況を正確に把握することから始めましょう。

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この記事を書いた人

ミラーマスター合同会社代表社員の鏡 孝正です。
私たちは、専門家任せになりがちな「相続」を、皆様がご自身の手でコントロールできるべきだと考えてます。
弊社のシステムコンサル技術を結集した『簡単相続ナビ』
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